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お昼寝の時間。
部屋に布団を敷いて、想子は園児たちを寝かしつけていた。
今日は比較的ぐずる園児もなくすんなり寝てくれた。さっきまでの大騒ぎとは打って変わって静まり返った保育室には穏やかな寝息だけが聞こえている。
想子はホッとすると欠伸をした。
なんだか自分も眠くなってきた気がする。
この保育園に就職して、2週間。保育の専門学校を出たばかりで、まだ研修期間の想子は、右も左も分からず、ずっと張り詰めて仕事をしてきた。その緊張の糸がフッと途切れた。
添い寝して寝かしつけていた園児の隣で、想子もウトウトし初めてしまう。
変な夢を見た。
ゲームや漫画から出てきたような4人のイケメンに口説かれる夢だ。
まず現れたのは、優しい微笑みを浮かべた王子様のイケメンだった。
「安心して。君のことはボクが守る! だからボクの前では素直になっていいんだよ」
次は、メガネをした知的ドS系のイケメン。
「バーカ、俺がお前のことを『好き』って言うと思ったか?」
ロリショタ系のイケメン。
「ねーねー、ボクのこと好き? 好きって言って!言ってくれないと怒っちゃうよ!」
背中で語る男気系のイケメン。
「ムッ…………、そばにいろ。俺から離れるな」
断片的なセリフだけがよぎってくる。
夢の中で想子は、これは夢だと気付いていた。
モテない人生の欲求不満が夢として現れたのかと、冷静に分析していた。
だがこんなくだらない夢を見ている場合じゃない。
そろそろ起きないと、お昼寝の時間が終わってしまう。
想子は目を覚ました。
だが不思議に思った。
目を覚ましたはずなのに目の前にはまだ王子様のイケメンが優しく微笑んでいたのだ。
「おはよう。ボクのプリンセス」
「はうっ!?」
【つづく】
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