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小山さんが職場に来なくなり、平穏な日々がやってきた。早々に次の仕事も決まって楽しく働いているらしい。
「もう次の仕事決まったんだ。まぁまたトラブルになってすぐ辞めちゃいそうだけどね」
長谷部さんはロッカーから作業服を取り出した。
「最初はまだ猫被ってんのよ。どうせすぐボロが出るよ」
私も苦笑いしながら作業服に着替えた。もう小山さんにイラつくこともないと思うと、とても気が軽くなった。
「尾崎さん、小山さんに好かれてたからまだ連絡とか来てるんじゃない?」
「あ〜、こないだもメッセージ来ましたよ。『こっちは意地悪な人もいなくて、楽しくやってるよ〜』だって」
「よく言うわ。あれだけ人を不快にさせておきながら、ねぇ」
「ここよりも時給が二十円高いそうですよ。良かったら尾崎さんもおいでよ、だって」
「え、行くの?」
長谷部さんと作業場へ降りながら「まさか」と言った。
「ここの仕事自分に合ってるし、そもそも小山さんがいる職場なんて絶対嫌ですよ」
「言えてる!」
笑いながら持ち場へついた。
その後も距離を置いていることに気付くことのない小山さんは、しょうもないことでメッセージを送ってきた。
『こんにちは!
今そっち方面に消防車が三台くらい行ったけど
なんかあったの?』
私は大きなため息をついた。知るわけないでしょ。逆になんで私が知ってると思うのだろうか。
私は通知だけ見て未読スルーした。後で『メッセージ気付かなかった、ごめんね』とでも送っておこう。
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