さようなら

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 適当に相槌を打ちながら、小山さんの話を聞いた。   「私ね、なんかボスの当たりが強いんだよね。ちょっと話してただけなのに、みんなの前で大声で『口動かさずに手を動かせ!』って言われて。公開処刑だよ」 「え〜、そうなんだ」  気付いてたんだと思いつつ、いらないことは言わなかった。 「他の人も同じように話してるのに、私だけに言うのよね。絶対いじめだわ」  小山さんは、なぜ強く当たられるのか全く気付いていないようで、不満そうだった。 「自分だけ言われるのはきついね」 「でしょう? もう私仕事辞めるかもしれない」 「そっか。職場の人間関係って大事だもんね」  当たり障りのない会話をして別れた。  我が子は小三の蒼真の上に、中一の娘、綾花がいる。綾花は中学に上がって、しばらくしたら不登校になった。その悩みを長谷部さんや職場で親しい数名には話していた。    小山さんにだけは知られたくない。知られたら絶対に人にベラベラと話してしまうからだ。綾花の話はしないようにして、話題になっても差し障りのない話しかしなかった。誰にも言わないで、と言ったところで、絶対に話してしまうと確信しているからだ。  夜、子供たちも寝て、リビングでゆっくりしていた時、長谷部さんからメッセージが届いた。
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