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すき焼きを食べながら、デートにでも誘おうかと思考を巡らせてみる。卓くんはどんな場所が好きなのかな。
「ねえ、今度どこかに遊びに行かないかい?」
「……いいけど。それって2人でってことだよな」
「うん。行きたいところとかある?」
「この間、商店街の通りを歩いてたら気になる喫茶店があったから、そこに行ってみたいかも」
「なら、予定合わせて行ってみようか」
「いいよ」
OKしてくれるとは思っていなくて驚いたけど、卓くんとデート出来るなんて凄く嬉しい。
まだ日程も決まってないのに、はやくその日が来ないかなって、年甲斐もなくわくわくしてしまう。
「楽しみだね」
「まーね」
肉を食べながら相槌を打ってくれる卓くんを見つめていると、視線に気がついたのか微かに頬を赤くしながら顔を逸らされた。
その仕草が可愛くて仕方ない。卓くんは可愛いというより、かなりイケメンの分類だけど、俺にはめちゃくちゃ可愛く見えるんだよ。
「野菜も食べなさい」
「親かよ」
「ふっ、ほら、あーん」
「やめろって」
野菜を摘んで卓くんの口へと運んであげると、嫌がりながらも渋々食べてくれた。それが嬉しくて、にやにやしていると睨まれてしまった。
「はやく食べなよ」
「あはは、照れてるの?」
「そういうんじゃないし。最後の肉貰うからね」
「あ!食いしん坊だなー」
軽口を叩きながら、すき焼きの入った鍋を空にして、お腹いっぱいになった頃を見計らってお開きにすることになった。
帰っちゃうのは寂しいけど、部屋は隣だしいつでも会える。それに、卓くんが元気になってくれたなら、今日はそれで満足だ。
「夜遅くなるし、そろそろ帰りな」
「……分かってるよ」
そう言いながら、動こうとしない卓くんを見て首を傾げる。卓くんの隣に移動して顔を覗きこめば、揺れている卓くんの黒い瞳と目が合った。
「まだ元気でない?」
「違う。ただ、その……」
チラチラと俺の顔を見てくる卓くんが何を言いたいのか全く分からない。
ただ、揺れる瞳が何かを訴えているのは確かだから、どうしたの?ってもう一度優しく問いかけてみた。
「……今日は一緒に居て欲しい」
言われた言葉に驚きすぎて固まってしまう。弱々しい声で、だめ?って尋ねてくる卓くんが本当に可愛くてたまらない。
「……いいけど……」
なにかしちゃうかもしれないぞ。
自覚したばかりの恋っていうのは歯止めが聞かないものだから。
「迷惑だよね。ごめん」
「そ、そんなことないよ!泊まっていきたいなら好きにしていいから。どうせ隣だしさ。服とか取ってくる?あっ、お風呂は家で入る?入ってくる??俺はどっちでも大丈夫だから」
焦りすぎて早口に巻くし立てれば、おかしかったのか卓くんがクスリと笑を零した。
「風呂入ってから来ていい?」
「もちろん!」
「ありがとう」
そう言って嬉しそうに笑うから、俺の心臓はドキドキで飛び出してしまいそうになった。
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