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自分の部屋を訪ねてくる者など滅多にいないので、不思議に思いつつもドアを開けると、そこにはローマンが立っていた。その手には小包みが携えられていた。
「お疲れのところすみません」
「いえいえ。どうしました? もしかして、何かやり残していた仕事がありました?」
おずおずとダリルは訊いた。わざわざ部屋まで訪ねてくるとなると、まず思いついたのがそれだった。
しかし、ローマンは穏やかな表情で首を横に振った。
「いえ、大丈夫ですよ。今日もきっちりお仕事を頑張ってくれました。私はこれを届けに来ただけです」
そう言って、手に持っている小包をダリルに差し出した。
「これは……?」
ダリルは戸惑って、小包みとローマンの顔を交互に見ながら訊いた。
「カーティス様からダリルさんへお届け物です」
「えっ!」
思いもよらない言葉に目を見張り、小包みを凝視した。
それは何の変哲もないもので、だからこそカーティスの意図が余計に分からなかった。
「なぜ俺に送ってきたんでしょうか?」
「さぁ、私も分かりません。ただ、カーティス様の性格から考えると悪いものではないと思いますよ」
困惑するダリルを安心させるように、ローマンが優しく言った。
「きっと中に手紙も入っているでしょうから、まずは確認されてみてはどうですか」
「そ、そうですね。ありがとうございます」
ダリルは包みを受け取りローマンの背中を見送ってから、ドアを閉めた。
(一体、何が入ってるんだろう……?)
ベッドに腰を下ろすと、ダリルは速くなった鼓動をなだめながら小包みを開けた。
そこには手の平に収まるほどの小瓶が入っていた。瓶の中には液体が入っているようだったが、瓶自体が青に色づいており液体の色までは分からなかった。
小瓶を指先で摘んで揺らすと、中で液体がとろりと揺蕩った。
(全然、何か分かんないな。……もしかしてカイル様へのプレゼントとか?)
だが、それならばわざわざ自分宛てにする必要はない。
考えてもきりがないので、ダリルはとりあえず同封されている手紙を読むことにした。
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