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 だからこうして年上の人間から心のこもった優しさを向けられるのは、少し尻こそばゆい気持ちだった。  だが、悪くはない。  ダリルは小瓶からとろりとオイルを手の平に垂らすと、それを指先や手の甲に満遍なく広げた。 (――いい匂いだ)  しっとりと潤った手に鼻先を近づけ、目元を綻ばせた。  その夜は優しい香りに包まれたおかげか、いつもより深く穏やかな眠りにつくことができた。  ****  オイルのお礼を早く伝えたいダリルだったが、なかなかカーティスが屋敷を訪れることはなかった。  ローマンの話によると、また繁忙期と重なったようでなかなかこちらに出向けないらしい。  少し残念に思ったが、ハウエル公爵家の当主となれば忙しいのも無理のない話だ。  仕事に専念して次の来訪をゆっくり待とう。そう思っていたダリルのもとに、カーティスからまた手紙が届いた。  内容は以前と変わらず、他愛のない近況が書かれているだけで、わざわざ手紙に書き綴るほどのものではない。しかもそれが定期的に届くようになったので、ダリルは戸惑った。  もちろん自分を気にかけてくれているのは嬉しかったが、なぜ急に手紙をカイルだけでなく自分にまで書くようになったのか不思議でならなかった。 (もしかして手紙がマイブームになったとか?)  しかしあの真面目一辺倒なカーティスが何かにはまる姿など想像できなかった。  仮にそうだとしても、送る相手は自分よりもっと適任の者がいるはずだ。 (とりあえず今度、オイルのお礼を言った時にきいてみよう)  ダリルは手紙を読み終えると、棚に置いてある小箱にそれを入れた。  小箱にはこの屋敷に来てからこれまで自分宛てに届いた手紙が入っている。そのほとんどはネイトからのものである。  ダリルが家を出てから頻繁に手紙を書いてくれていたネイトだが、一ヶ月前よりそれがパタリと止んだ。  もちろんそれは、兄への敬慕が薄れたわけでも、病に伏しているからでもない。
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