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 もし、カーティスからの手紙が来なくなったら、またこのオイルを使おう。穏やかな眠りへ優しく導いてくれるこの香りならば、胸の寂しさをまぎらわしてくれるに違いない。  ダリルはベッドに潜ると、そのまま目を瞑った。いつもの優しいオイルの香りがなかったせいか、その日は眠りにつくまで、もどかしいほど時間が掛かった。  ****  カーティスが久しぶりに屋敷にやってきた日、ダリルは近況報告のため書斎に向かったローマンが戻ってきたのを見計らって、部屋を訪ねた。 「先日は手荒れ用のオイルをありがとうございました」  執務机に座るカーティスの前に立ち、ダリルはまずオイルの礼を伝えた。   「いや、礼は必要ない。君には世話になったからな」  愛想の欠片も見せることなくカーティスが淡々と言う。  世話になったというのは恐らく手紙のことだろうが、それこそ礼など不要なことであり、ダリルは恐縮しきってブンブンと手を横に振った。 「いえいえ、大したことはしていません」 「君には大したことないかもしれないが、私は助かった。それで、手荒れの具合はどうだ?」  カーティスにじっと手を見つめられ、思わずダリルはサッと手を後ろに隠した。 「は、はい、お陰様で随分とよくなりました」    嘘である。  確かにオイルを毎日塗っていた時は順調にきれいになっていたが、残り半分となったところで、使い切ってしまうのがおしくなりあまり使わなくなった。  そのせいで肌の状態は振り出しに戻ってしまっている。  使わなくなった理由があまりに子供じみたものである上に、肌荒れを気にして贈ってくれたカーティスの親切心を裏切っている自覚もあり、なおさら手を見せることができなかった。
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