小さな同窓会

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小さな同窓会

野口さんから連絡を貰い、店で待ち合わせをした。 入る時には隠れ家の様なお店に思えたけれど、中に入ると広くて野口さんが見つけられなかった。首を右に左に振っていると野口さんからメールが届き、「15卓にいるから」とある。 「15卓はどこですか?」 従業員に訊ねて案内して貰った。 「座って座って!」 野口さんが楽しそうに自分の座る前を指差す。 「お疲れ様〜」 とりあえずビールで乾杯。 「あ、婚約おめでとう」 さっきは野口さんの勢いに負けて言えなかったから、改めてお祝いを言った。 「やだ、ありがとう」 頬を染めて恥ずかしそうにする野口さんは、やっぱり綺麗で可愛い。修司の元彼女だっただけあると思った。 「榊くんから連絡貰えなかったじゃない?」 「… なんか、すまなかった」 バツが悪くなった気がして、思わず謝った。 「ううん、お陰で、これ」 また左手を綺麗に揃えて俺に見せる。 「彼ね、四月から大阪に転勤になってさ、遠距離してたんだけど全然、会えないし会おうとかなくてね。久し振りに会っても何だかどうでもいい風で、私も頭きてたし、榊くんからの連絡を気にして待ってたら嫉妬?したのかな?大阪に来ないかってプロポーズしてくれたの」 嬉しそうに野口さんは話した。それは良かったと胸を撫で下ろす。 それから野口さんとは昔話しに盛り上がり、久し振りに楽しい時間を過ごす。 「あー!いたいた!」 「きゃー!久し振りー!」 突然、一人増える。野口さんと同じく高校二年の時に同級だった田沢さんだと分かったのは、少し話してからだった。女の人は皆んな綺麗になって見違える様でため息が出る。ちょっとした同窓会の様になって楽しい。 それに田沢さんも修司と付き合っていた事がある。 「一昨年の『榊くんを偲ぶ会』以来よね」 野口さんが田沢さんに笑って言う。また会の名前が変わっているし、何だか修司が死んだ人みたいに聞こえて少し抵抗を感じた。 「リエは榊くんと二ヶ月位だよね、付き合ったの」 リエとは田沢さんの事。二ヶ月じゃ付き合ったうちに入らない気がする、と笑いながら田沢さんは運ばれたグラスの酒を飲んでいた。 「リエも榊くんに『好き』って言われてないんだよね」 「そう、『私の事好き?』って訊いてもニコッと笑うだけで言ってくれた事ない」 口を尖らせてそう言うと俺をチラリと見た。 「春名くんって、彼女いた?」 「あ… いや… いない」 急にそんな事を訊かれて戸惑った。 「「何で?」」 野口さんと田沢さんに、声を揃えて訊かれる。 「今は?いるの?彼女」 瞬時に色んな考えが頭を駆け巡った。「いる」と言っても「いない」と言っても、あれこれ訊かれそうで面倒臭い。 「んー、今はいない」 ふぅん、と二人揃って俺の顔に見入ったが、また高校時代の思い出に盛り上がる二人。
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