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後ろ暗い関係の始まり
背は俺と同じくらいの主任の、真剣な顔が真前にある。
「え… 」
主任、どうしたんだろうと目が泳いだ。
「分かってるんだろう?」
え?何を?
… えっ!?
主任が真剣な、それでも少し憂を帯びた表情で俺の顔を見る。
え?… どうしよう。修司の顔が瞬時に浮かんだ。
「こんなにアピールしてたんだ、気が付かない訳がないだろう?」
アピール? 気が付かなかった。そして修司の言葉も浮かんだ。
『お前さ、自分に好意を持つ人間に対して、本当に無頓着過ぎるぞ』
どうしよう。足が竦んだけれど、修司だって女といるんだと思って、唾を呑込み、思い切って、掴まれた手を握り返すと主任が手を引き、顔を近付ける。
唇が触れ、キスをした。
頭の中は、どうしよう、どうしようと思うばかりだったけれど、絡めてくる舌をそのまま受け入れてしまう。
『経理部のイケメン』と言えば、岡野主任の事だと社内の人間は皆、分かる。そんな人が俺を… 。
修司以外の人を知ってもいいだろうかと、俺を抱き寄せた主任の腰に手を回した。
◇◆
「あぁ… はぁ、はぁ、ふぅ… ん」
主任の荒い息を冷静に聞いている。抱かれている、主任に。修司と違って自分本位の抱き方ではない、優しい。
首筋にキスをしながら俺のモノを握って軽く扱く。
ずっと修司の事が頭から離れなかったけれど、這入ってきた時には身体が忘れさせてくれた。
「ああんっ!ああ、んん… ん、あん」
俺の声に主任が酷く興奮をした。
「ねぇ… はぁっ、誰かと… ん、んんっ!セックス、して、るの?」
膝裏を腕で持ち上げ正常位、何度もキスをして、ピストンしながら俺に訊く。
「んんっ、… ん、ん、ん、ん… 」
突かれる度に声が漏れる。突きながら俺のモノを扱いてくれるから、俺が先に達してしまった。
間もなく主任も絶頂に達すると、全身を俺の身体の上に乗せて頭を撫でる。
「慶人って呼んでいい?」
どうして関係を持つと名前で呼ぶようになるんだろう、てか、俺の名前知ってるんだ、とぼーっとした頭で思う。
「慶人、凄いよ、最高だ」
囁きながら顔中にキスをする。
修司も、俺を『いい』と思ってくれているのだろうか、そんな思いが頭を過ぎった。
「ねぇ、俺の事、彰って呼んでよ」
主任、彰って名前なんだ、と、これまたぼーっと思う。
「そんな、呼べません… 」
小さく答えると、萎えてしまった俺のモノを口に咥えてしゃぶり出すから、また直ぐに勃って硬く大きくなる。
「さすが若い、反応が早いな。口でイかせるね」
ジュボジュボと音を立てる。気持ちがいい、「ああ… 」思わず声が出てしまう。
至れり尽くせりで細かい所にまで気を配ってくれるセックスは初めてで、というか俺は修司しか知らないからそうなるのだけれど、こんな風に優しく愛された事がないから、少しの戸惑いと悦びと、ほんの少しの物足りなさを感じた。
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