小さな同窓会

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「じゃ、帰ろうか!」 野口さんが言って、「お会計お願いしまーす」と田沢さんがバックを取りにテーブル席に来る。 「あ、いいよ、今日は俺の奢り」 修司が笑顔で言うと、益々二人の目がキラキラと輝き「もうっ!触っていい?」と芸能人にでも会った様な勢いでペタペタと二人で修司を触っていた。 「ちょっと写真撮っちゃおう!」 「やだ、私もっ!」 「あんたは結婚するじゃん!」 「今、それ言わなくていいでしょ!」 二人でやいのやいのと揉めている。 「私の元カレって皆んなに自慢するんだー!」 大層嬉しそうにスマホを胸に抱き締めている二人を、椅子にだらけて座る俺は黙って見ていた。 「春名くん、帰ろう、って、大丈夫?」 大丈夫そうじゃない俺に今頃気付いたのか、酔いどれながらもそんな風に思った。 「少し休ませるから、いいよ、二人は先に帰って」 修司の言葉に満面の笑みで、ぶんぶんと手を振りながら野口さんと田沢さんは店を出て行った。 店に二人きりになり、大きく溜息を吐くと腰に手を当てチッと舌打ちする修司の姿が、ぼんやりと視界に入る。 「帰れるのか?」 「ああ… 」 俺も帰ろうと立ち上がったが、思うように身体が言う事を聞いてくれず、また椅子に座り込んだ。 「今、片付けちまうから、休んでろ」 店の片付けをしている修司をぼんやりと見ていたが、そのうちにまた寝てしまった。 「歩けるか?」 頬を軽く叩かれて目を覚ます。 ビジネスリュックを修司が背負い、俺の腕を肩に回して椅子から立ち上がらせた。 肩を借りたはいいが、背の高い修司にぶら下がっているようになって、ほぼ引き摺られる様に前に進む。 修司の部屋に行くのか、酔ったぼんやりとした頭でそう思いながらズルズルと引き摺られた。 「ほら、ほら!ちゃんとしろよ!」 玄関に入った途端に安心してしまったのか、俺はその場で崩れ落ちた。 次の瞬間、酷い吐き気が俺を襲う。 ウッ!口を押さえたが、俺の記憶では、今の今まで嘔吐というものをしたことがなく、この状態をどうすればいいのか分からずに、ただ耐えていたが修司が俺の脇を抱え上げトイレへと連れて行った。 「吐いちまえ、楽になるから」 便座の上に顔を誘導し、吐くようにと促すが吐いた事のない俺は抵抗感でいっぱいで、えずくだけで嘔吐が出来ない。 そんな俺の口の奥に指を突っ込み、修司が思い切り吐かせてくれた。 修司の手が汚れているし、嘔吐で俺は涙がボロボロと流れている。 はぁ、はぁ、と涙を流して大きな息遣いの俺を今度は洗面所に連れて行く。 「口の中、気持ち悪いだろ、うがいしろ」 うがいをして、その場でまた崩れ落ちる俺に 「大丈夫か?飲み過ぎもいいトコだぞ」 そう言いながら、口の周りの水を拭いてくれている。 「まだ吐くか?」 「水飲めるか?」 焦点が定まらない目で修司を見つめていた所までは、微かに記憶があった。
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