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嵐の前の…
翌朝、目が覚めると酷い頭痛に襲われた。
「ん、んん… ?」
そうだ、修司の部屋に来たんだったと、両こめかみを押さえながら思い出す。ベッドの隣りを見ると修司はいないし、寝ていた形跡もない。
少し動いただけでもガンガンと頭に響く。時計を見ると七時半を過ぎている。飛び起きて支度をしようとしたが頭痛で思う様にならない。
顔を顰めながらリビングへ行くと、ソファーで修司が寝ていた。胸がズキンッと痛む。修司に迷惑をかけた事や、ベッドで一緒寝なかった修司、色んな意味で胸が痛んだ。
「ん?お、慶人、起きた?どう?具合は」
目を擦りながら起き上がって修司が訊いた。嫌で俺と一緒に寝なかった訳ではない、そんな表情が伺えて少しホッとする。
「駄目そうだな」
笑いながら俺の様子を見て立ち上がると、キッチンへ行き鍋を温めている。
「しじみの味噌汁だけでも、飲んでいけ」
彰さんの事や、メグミさんとかいう人の事とか、何も、何事も無かったかの様に、修司が目の前でいつもの様に振る舞う。
俺は自分の感情にまた負けて、修司の傍に寄り唇を寄せた。
久し振りの修司の舌が愛おしい。
「酒、臭ぇな」
修司が小さく笑った。
急いでシャワーを浴び、ぐったりとした身体で椅子に座ってしじみの味噌汁を飲んでいる間、修司がドライヤーで髪を乾かし、セットまでしてくれる。
二日酔いで痛む頭を抱えながら部屋を出た。胃腸薬と頭痛薬を飲む様にと渡されて、見送ってくれた修司の笑顔に涙が出そうになる。
こうしてまた俺は、どうにもならない泥沼にはまっていった。
季節は梅雨に入り、嫌と言うほど雨が続く。
休みの日、昨夜からずっと、起きてからも、目が合うと唇と身体を重ねた。
「… 雨、鬱陶しいな」
「いいじゃん、今日は一日セックスしようって言ったろ?」
修司が俺の身体中に舌を這わせる。
乳首を舌で転がされ、善がる俺の指に指を絡ませてきつく握る修司。
もう何度目だろう、繋がるのは。
毎回気を失いそうな位に絶頂を迎える。
「慶人、慶人… 」
泣きそうな声で修司が耳元で俺を呼ぶから、驚いて固まった。頬を俺の頬に擦り付けて、何度も「慶人」と名を呼んだ。
瞳だけが修司を追い、何故だか涙がこぼれた。
降り止まない雨を窓から眺めていると、後ろから修司が抱き締めて首筋にキスを落とす。
今までの中で一番、飛び抜けて、優しく大事に俺に接して、抱いてくれている。
それでも君はまた、俺に飽きて女に興味を置くのだろう、そんな事をいつも考えて自分の中で心構えをしてはいる。
… してはいるが、俺は、俺に飽きてしまう修司に、いつも怯えていた。
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