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「ああ、高校の同窓生、春名」
微笑んで榊の横に立つ綺麗すぎる女性に答えていた。
「春名くん?修司がお世話になっています」
美し過ぎる微笑みを浮かべて俺に頭を下げた。
歳上の女性か、榊に相応しい。
二人並ぶと恐ろしい程に絵になった。それにしても随分と歳上の方だ。こんなに歳上の女性を彼女に出来るなんて、さすが榊だ。やはり今日来て良かった、榊への想いをこれで止められる。
俺にしてはポジティブな思考だと自分を褒めてやりたい気分だった。
「姉貴、もういいよ。店も落ち着いてきたから」
『あねき』さんと言うのか、少し珍しい名前だな… えっ?姉貴?
「あ、と… お姉さん?」
目が点になって榊と女性を見る。
「そう、姉貴。週末と平日忙しい時に手伝って貰ってんだ」
「そうかっ!あ、初めまして、春名慶人と言いますっ!」
途端に元気になって立ち上がり、丁寧に頭を下げる俺に、驚いた顔をしてお姉さんが「しっかりした方ね」と榊に目を遣るのが分かった。
「だろ?でも堅すぎんだよな〜」
俺が参ってしまう顔、片眉を上げてお姉さんと俺を交互に見た。
「ゆっくりしていってくださいね」
言われて見たら鼻筋や目元が似ている。モデルさんの様に綺麗な筈だ、榊のお姉さんなんだから当然だな、としみじみ思った。
「榊の彼女かと思ったよ」
あまりの安堵に、思った事が口に出てしまってハッとする。
「姉貴、八つも上だよ彼女に見えたか?そうか、彼女ねー。そう言えば春名、お前、彼女は?」
急に訊かれて戸惑う。
「高校ん時、あんなだったじゃん。大学生になって彼女作った?」
あんなって、何だよ、と思う。
「い、いや、出来ていない」
正直、誰にも興味が持てなかったし、彼女が欲しいとも思わない自分に多少の疑念は抱いていた。
「マジで?え?お前、女に興味無ぇの?」
不味い、榊に想いを寄せている事がバレてしまう。
「そういう訳ではない」
はっきりと、そうひと言だけ答えると
「理想、高いんだろ」
眉を顰めてそう言われ、ほっと胸を撫で下ろす。
それから色々と話した。
大学に入ってすぐこの店でバイトを始めた榊が、オーナーから「この店をやらないか」と声を掛けられたのが三年生になって間も無くだったと話す。
バイトの頃に、ああしたらどうですか?こうしたらどうかな?と店が良くなる様にオーナーに提案していたのを高く買われた様だと笑った。
「特にやりたい職業も無かったし、ここにバイトに来るのがあの時は何より一番楽しみで、よく大学サボってバイトに来てるのをオーナーは気付いてたんだよな。もう大学なんかさっさと辞めて、喜んで話しを受けた」
榊の事が聞けて嬉しかった。
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