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掴まってる時間はすごく短く感じた。
あっという間に自転車置き場についた。
「適当に自転車停めてくる」
私が降りた後、彼も自転車から降りて押して停めに行った。
彼は気づいてたかな?
ここまでの道中でも、制限速度書いてる標識の数字がひっくり返ってたり、歩行者信号の上と下が逆になってたりしてたけど…。
「よし、行こうぜ」
自転車の鍵をポケットにしまった彼は、私の前を歩き始めた。
私もついて行く。
駅構内へ続く階段の手前で彼が足を止めた。
「どうしたの?」
「あれ、見ろよ」
彼の指さす方向を目で追う。視界に飛び込んできた情報に目を疑った。
「裏…参道、駅?」
確かに表参道駅に来たはずなのに、表示には裏参道駅と書かれている。おかしい。
「とりあえず、降りてみる?」
「……そうしよ。止まっててもなにも出来ないし」
階段を降りて行った先で、更に目を疑った。
【裏参道駅にようこそ!
この度、表参道との行き来が解禁となりました!表参道世界からの皆さん、裏参道世界の解禁です!どうぞ、楽しんでいってください!】
そんな文言が、改札横の壁に大きく掲示されていた。
表参道世界からの皆さんって……、ここまで来るのに私たち以外の人にも会わなかったけど。
どうなってるの?
「なんだよ、これ……。こんな嬉しくない解禁あるかよ。誰でもいいから、元の世界へかえしてくれよ………。」
掲示物に拳を当ててうなだれる彼を見ながら、私は膝から崩れ落ちた。
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