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「だれか、いないかー?」
玄関を開けると丁度、前の道を人が通り掛かっていた。
「え、田口君?」
そう声をかけたら、彼はこっちをバッと見た。
「植野?植野じゃん!良かった、やっと人に会えたぁぁぁ」
彼の近くに寄る。
ルイージの格好をして、自転車をついていた。
「やっと人に会えた……ってどういうこと?」
そう聞いてみたら、彼は顔を強ばらせた。
「おれが今から言うこと、冗談じゃないから真剣に聞いて欲しいんだけどさ?」
「う、うん」
「おれ、これに着替えてすぐくらいに川原からメッセ来てさ、返信しようと思ったんだよ。携帯を手に取って壁を背もたれにしようとしたんだけど、壁が無くなったみたいになって、おれ、びっくりして携帯から手ぇ離しちまってよ…。それで…それで……、なんか気づいたらこっちに居たっていうか。こっちに来たら、携帯無くって、連絡しようもないから、誰か知ってる人探して電話借りようと思ったんだけど…、全然、全然人居なくてさ」
途中から早口気味で、そう話してくれた。
「私…は、着替えて鏡でチェックしてた時に、鏡に小さな汚れあるの見つけて、取ろうとしたら鏡の中に手が入っちゃって、入った手を誰かが掴んで引っ張られてこっちに来た…みたいな?」
互いに経緯を話して、深呼吸をする。
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