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王子様のように素敵な男性と、これまた素敵な夜を過ごした。
「王子様」とはマッチングアプリで出会い、なんとなく話の馬が合うので実際に会ってみることになった。
彼は外資系IT企業で若くしてプロジェクトのリーダーを務めているらしい。容姿もよく、清潔感がある。ビストロの料理は小洒落ていて少し落ち着かないし、彼の言っていることは少し難しかったけれど、容姿がいいからなんでもよかった。
この日に向けて自分なりに自分磨きをし、できる限りいい女に見えるように着飾った。それが功を奏したのかもしれない。彼の家で飲み直すことになった。素敵なドレスや馬車を用意してくれる妖精なんていないので、自分で自分に魔法をかけるしかない。
夜も更け、少し緊張する私をとても優しく抱いてくれた。ワンナイトとはいえ普段私を求め。てくれる人などいないので、正直気分がいい。
この夜が終わればなんてことない普通のアパートに帰り、明日からまた嫌味な上司に皮肉を言われながら仕事をするのだ。決して悪い生活ではない。が、少しぐらい夢も見たい。
だから、最後の悪あがき。彼がシャワーを浴びているスキに、彼のウォレットにNFTアートを贈った。抽選で偶然手に入れたCGのスニーカー。そんな置き土産に淡い希望を抱き、彼のマンションを出た。ガラスの靴を置いていくように。
あれから、連絡は取り合うものの特に進展はない。なんとも味気のない御伽噺だ。そして何より贈ったNFTが高騰しているのが悔しい。作者が新進気鋭のアーティストとしてニュースに取り上げられている。
今頃私が残した手がかりは、高値で売買されてるのだろう。
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