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光安と桃野の場合④
結局何がしたいのかよく分からなかった男子から離れた後は、2人で穏やかに過ごせた。
のんびり昼ごはんを食べて、ゲーセンいったり公園でボートに乗って話したり。本当にザ・デートって感じのことまでした。
昼間のやつの言っていたことが気になりはしたが、桃野が楽しそうにしているのにぶり返すことはないかと触れないことにした。
『ゲイらしいから――』
俺の嘘の告白を自然に受け入れてくれているのが答えなんだろう。
きっと、桃野は恋愛対象が男なんだ。
俺たちは、とんでもない罰ゲームを実行してしまったということだ。
(謝ってすまないよな…)
お互いに恋愛対象ではないことが前提での罰ゲームのはずだった。
そうでないと、笑って済ませられない。
もしも本当に桃野が望んでいるならもう、男らしく責任を取るしかないのかもしれない。
ほとんど話したことのない俺のことを元々好きだったって可能性は低いと思う。でも、告白されたからとりあえず付き合ってみるっていうことをするやつもいる。
だから、桃野がもういいかって思うまで、俺は「恋人」でいよう。
日が傾き始める時間には、俺の中でしっかり結論が出ていた。
そして不思議なことに、それが「仕方なく」という感じでもなくて。
そのくらい、桃野といる時間を楽しく感じていたってことなんだろう。
「都合が良ければ、家に来ないか?」
「…! え…」
そろそろお開きかなーと思っていた時の桃野の言葉に必要以上に驚いてしまった。
初デートで恋人の家ってさすがにどうなんだろう。恋人を家に呼ぶっていったらやっぱり、と邪な想像が頭を過ぎる。
いや初デートでさすがにそれはないな。
「夕飯、カレー作り過ぎたから、一緒に食べてくれると助か」
「行く。」
食い気味に即答してしまった。
美形の恋人の誘惑というよりカレーに負けた。
断れるやついるかなこの誘惑に。
カレーだぞ。
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