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光安と桃野の場合・完
自覚をしたらしたで、桃野と目が合わせられなくなった。
急にとても恥ずかしい。
告白してから、毎日桃野と帰っていたのだが、今日は声を掛けられる前に教室を出てきてしまった。
謝って、改めて告白したいと思うのに気持ちの整理がつかない。
(本当のこと言ったら嫌われるよな…)
罰ゲームのことを話したら桃野が傷つくからとか、そんな綺麗事を言うのはよそう。
このまま恋人で居させてもらいたいから、言いたくない。
「卑怯者…」
1人で頭を抱え込んだ。
場所は学校から徒歩圏内の公園のベンチ。
来た時には小学生たちが走り回る声が聞こえていたのに、今は姿が見えない。
運動のためなのか、杖をついて歩いていたおじいさんもいた気がするが、もう帰ったようだ。
顔を上げると、いつの間にか周りは薄暗くなっていて、公園を照らすライトも点き始めている。
デカい高校生が1人で長時間ベンチでぼーっとしている様子は、子どもたちにはさぞかし不気味だったことだろう。
不気味っていうか、怖かったかも。
申し訳ないことをした。
答えなんて、とっくに出ているのだ。
騙したまま付き合うのは嫌だから言うしかない。
それで、もう話しかけるなって言われたって仕方ない。
桃野が俺のことを実は大好きで、それでも良いから恋人でいたいって言ってくれるような奇跡が起これば別だけど。
「あー!! 考えても仕方ない!! 明日言うぞー!!」
「何を?」
誰も居ないと思ってデカい声を出したのに。
後ろから返事が来た。
驚きすぎて全力でジャンプする勢いで体を跳ねさせてしまった。
「…す、好きな奴にちゃんと告白しようかなって…」
何故か正直に答えながら声がした方へ振り返る。
短い金髪の背の高い男子が立っていた。
細くて短い眉毛、気だるげな目、高い鼻、それらが完璧な配置でおさまる小さい顔。
印象的なのは耳に光る、左右で形の違うピアスと銀のシンプルなネックレス。
第二ボタンまで開いた白シャツからは黒地のTシャツが見えている。
「空…?」
空凪
同じクラスになったことがないので会話するのは初めてだ。
毎日喧嘩に明け暮れてるとか、他校に舎弟がいっぱいいるとか、毎日違う女の子を連れているとか、なんだか色んな噂がある奴だった。
そして、桜田が、罰ゲーム告白をしてOKを貰ってしまった相手だ。
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