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桜田と空の場合②
「空! 居るか!」
俺は昼休みになった瞬間に教室を飛び出し、隣の教室に駆け込んだ。
こういうのは勢いが大事だからとにかく早くしないと。
授業を終えたばかりの先生や他の生徒たちがギョッとしてこちらを向く。
「桜田どうした?」
「空? 空って言った?」
などと教室中がざわついた。
やっちゃったかな、と思ったけれど、まぁ良いか。
注目されながら教室を見渡すと、一番後ろの窓際の席で頬杖をつきながらこっちを見てる美形を見つけた。
「飯、食おうぜ!」
入り口から声を掛けると、完全に他人のふりをしたいという表情でそっぽを向かれる。
しかし、そんなことで退いてやる俺ではない。
先生までもがソワソワとした様子で見守る中、空のところまでズカズカと歩く。教室の空気は無視して肩に腕を回し、窓の方を向いている顔を覗き込んだ。
「飯、一緒に食おうぜ!!」
「…パン買いに行くから放せ…」
俺のしつこさにとうとう諦めた空が、大きなため息を吐いてゆっくりと立ち上がった。
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