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光安と桃野の場合②
そして、告白した日の翌日。
どうしても心が騒ついて上手く眠れなかったせいで、午前中はふわふわと過ごしてしまった。授業中はほぼ寝ていたと思う。
そういうわけで何もできないまま昼休み。
俺は言うぞーっと心に決めて桃野に弁当を一緒に食おうと誘った。
いつも1人で教室で食べているから、邪魔くさかったりするかとも思ったけど、直ぐに頷いてついてきた。
少しびっくりした。
屋上へ行くと、今日はまだ誰も居なかった。
ラッキーだ。
何組もいる時もあるし、先客によっては遠慮することもある。カップルがいる横で食べるのは気まずいもんな。
誰も来ないうちにごめんなさいをしなければ。
(飯をさっさと食べて言おう!)
黒い巾着袋の中から、ガサガサとアルミホイルに包まれたおにぎりを出す。大きく齧り付いていると、横から視線を感じる。
桃野の黒い瞳がじっと俺を見つめていた。
困った。一体どういう感情なのか全く分からない。
「んー…?」
どうかしたか? と聞きたかったけど、口の中がいっぱいすぎて喋れない。俺は視線を合わせると、モグモグと口を動かしながら首を傾げた。
「大きいおにぎりだなと思って。」
どうやら意図が伝わったらしい。
俺は自分の手元にあるおにぎりを見る。
なるほど、桃野の弁当箱に入っているおにぎりの3倍はある。
うちは両親が共働きなのもあって、昼は自分で準備をする。おかずなんて面倒すぎる。とりあえず腹を満たすことだけを考えて、ふりかけおにぎりを作っているのだ。
「俺、手がデカいからな~」
笑って手を広げて見せると、桃野は目を瞬かせた。そして自分の手と見比べる。
白くて、指が細くて長い綺麗な手に思わず目を奪われてしまう。
「本当だな。だから身長も高いのか。」
そう言いながら、掌と掌を触れ合わせた。
俺の手の方が一回りくらい大きい。
見た目からなんとなく想像していた通り、体温の低い手だった。
「んー、そうかもな。桃野は175㎝くらいか?」
「よく分かったな。」
手を離しながら俺は軽く笑う。
「10㎝くらい違うなって、さっき窓に映った時に思ってさ~」
並んで映る自分たちを見て、こんな美男子が俺と付き合うことにしたことが不思議で堪らなかった。
正直、俺も割と女の子にモテる方だとは思うんだ。好きな人が出来なかったから付き合ったことはないけど、何回も告白されたことがあるし。
身長が高いとカッコ良く見えるから羨ましいと、平均身長よりも低い桜田に言われたことがある。
微妙に失礼だよな。
俺のどこが好きなのか聞いてみたら、「話してて安心する」とか「なんだか落ち着くの」って答えてもらったことがある。自分ではよく分からないけど、そういうところが長所なんだろう。
でも、桃野と話したのは告白の時以外は挨拶くらいだし。
(俺もしかして揶揄われてる? うーん、そんな奴にも見えないしなぁ…まつ毛長い…)
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