梅木と水坂の場合①

2/5
前へ
/99ページ
次へ
   家には一室、本棚の部屋がある。  家族全員がそれぞれ好きな漫画を買ってきて、ちょっとした図書館のようにずらりと並んでいる。  俺、梅木真守(うめきまもる)はその本棚を見上げた。  だが、目当てのものを見つける前にスマートフォンの音が鳴ってポケットに手を突っ込んだ。 『告白、OKされたどうしよう』  画面に映った文章を見て、眼鏡のレンズが割れるかと思った。 「えっ」  生徒会室での出来事から現実逃避しようとしていたのに、一気に引き戻された。  声を上げながら機械の画面をスライドすると、短い文章が増える。 『え、俺も』 「杏山(りょう)もかよ!」  ひとりでしゃべりながら、俺も送信ボタンを押した。 『俺もなんだけど! 助けてくれ!』 『全員!? そんなことあるか!?』  最後の砦、光安(みつやす)までもが告白に成功したという。  俺はその場に崩れ落ちた。  いや。  そもそも俺は、告白に成功したと言っていいのかすらよくわからないんだけど。 事の発端は、昼休み。 「そういえばお前たちくらいのころ、告白ゲームとかしてたな。」    今、連絡を取り合っている4人で、屋上に居たときのことだった。  昼ご飯を食べながら、もう3年だから卒業まであっという間なんだろうな、なんて話をしていた。  その時、様子を見に来たのが隣のクラスの担任の肥護先生だ。 「告白ゲーム」なんて聞いても、俺は最初は恋愛シミュレーションゲームかなんかだと思ってしまった。  しかし、意味を理解したときには「うわぁ」としか言えなかった。   「告白ゲーム」とは。  何かの罰ゲームとして同性に告白する、というものだ。    最悪最低だ。  女子にそれやられたら、俺なら3日間は引きずってしまう。  今回のルールでは、告白相手は同性。  条件は「あまり親しくない相手」ということだ。  きちんと相手を見定めないと、残り1年の学校生活に支障がでそうだな。  
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加