光安と桃野の場合②

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 嘘だったと言えないまま1週間が経過した。   『いや、言えよ! 俺もだけど。』 『言うタイミングどこにあるんだ…』 『本当に訳わかんなくなってきた!』 『どうしたらいいんだー!』    金曜日の夜。  報告会は阿鼻叫喚だった。  スマートフォンの画面を頭を抱えるスタンプが流れていく。  俺だけじゃなく、他の皆もそれぞれの理由でなかなか上手くいかないらしい。  ただ、「嘘でした」って謝るだけなのに。    俺もあれから、言おう言おうと思って過ごしている。毎日一緒に昼ごはん食べてるし、毎日一緒に帰っている。  しかし一向に真実を打ち明けられない。  嘘であることを伝えるどころか、どんどん仲良くなっていっている気がする。  こうなってくると、せっかく親しくなったのにわざわざ嫌われるようなこと言う必要は無いんじゃないかとすら思ってきた。 (でも、恋人ではないんだよなぁ)  いい友達にはなりたいと感じているんだけれど。  どうするどうすると全員が混乱中の画面を眺めながら溜息を吐く。  そういえば、一応報告しておこうと親指を動かす。 『明日、桃野と2人で街に遊びにいくことになってる』  驚いた顔のスタンプを桜田(サク)が連発してきた。 『いやそれ向こうはデートだと思ってるだろ!!』  梅木(ウメ)からのメッセージを見て自分でも知らないうちにニヤけてしまっていた。   「…デートかー…」    帰り道、桃野に誘われた時のことを思い出す。  あまり深く考えずに「行こう!」と返事をした俺に、嬉しそうな顔をしてくれたんだ。  この1週間で桃野の表情が少しずつ読めるようになってきたのが楽しい。  初めは全然表情が変わらないと思ってたけど、よく見てると感情に伴って変わってるんだ。人間だから当たり前だけど。   『じゃあ人生初のデート行ってくるー』 『なにそれ楽しいやつー!』 『いってらっしゃいー!』 『お前それでいいのか!』    本当は好きな女の子と行きたかったし、初デートに理想も憧れもあったけど。あれだけの美形相手なら、初デートが男なのもありかも思うのは俺が変なのだろうか。  というか、デートなのか。   『明日は午前10時に駅前でいいか?』    着信音と共に一番上に表示された文章。    親指を立てたキャラクターのスタンプをタップしながら、ほんのり胸が踊るのを感じていた。
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