梅木と水坂の場合・完

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梅木と水坂の場合・完

 先生たちに知られていたという事実は、あまりにも恥ずかしすぎた。  だって、見てたら分かるってことは他の先生たちも気づいている可能性があるってことだ。  嫌すぎる。  俺は授業中は水坂を見ないように徹底した。  休み時間は、水坂が声を掛けてくる前に光安たちのところに話しかけに行った。  他の人と話していると、水坂はわざわざ割り込んで来ることはなかったからだ。  でも、杏山(りょう)の恋人になった土居(どい)は遠慮なく教室に入ってきて話に混ざる。  桜田(サク)の恋人の空なんか、やってきたときには問答無用で桜田(サク)を連れていく。  そんな時は、俺と水坂は本当にごっこ遊びなんだななんて感じてしまう。  ちょっと寂しい。 (もう少し強引にきても……いや、良くない。恥ずかしい)  心の中でため息を吐きながら、光安と桃野が並んで教室を出て行くのを見送った。  一緒に下校出来るのが羨ましい。  水坂は放課後だけは時間が合わない。  逃げる必要もなく、ほっと一息つけるはずのこの時間が、だんだんつまらない時間に変わってきていた。  それがどうしてかなんて、自問自答することすらバカバカしい。 「……今日は待ってみようかな……」  特にイベントごとがない日は1時間ほどで生徒会は終わるはずだ。  俺はカバンの中から、明日が提出期限の宿題プリントを机に広げた。
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