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「ああ、クソ」
思わず悪態をついてしまって、自分自身を制御できていないことが明るみに出る。悪態の先にいた後輩はムッとしたみたいに眉根を寄せるものだから、慌てて弁解する。
「違う違う、これは自分自身への嫌悪だよ」
「え?」
「だって……研究者として駄目だろ、こんなことで一喜一憂していたら。……こんな、こんなことで」
声が震えた。僕の優秀な後輩はその僅かな震えですら見逃さない。
「先輩?」
「……だって、そうだろ。僕が駄々を捏ねたって、君がどれだけ憤慨したって、被検体769――フェリセットという猫が宇宙に向かって打ち上げられることは覆されないし、そこで命を落としてしまうかもしれないし――だったら、その都度心を揺らすなんて、馬鹿みたいじゃないか」
フェリセットにとって僕はきっと、恨まれるべき人間に違いない。14匹の猫の中からフェリセットを選んだのも僕だ。この“世界初”にフェリセットの命を懸けたも同然。
だから僕は、自分のために――冷徹な人間を演じ続けてきた。
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