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だってそうでもしなければ、お別れの時に泣いてしまうから。情が移ってしまったら、見送るときに苦しくなってしまうから。
選んでおいて悲しむなんて、そんなこと――できるものか。
だから、君を物のように扱った。被検体がフェリセットという猫であっただけ。今までのロボットと同じだ。
その行動が酷いものだと知りながら、それを止めようとする自分自身に気づかぬふりをして、見て見ぬふりをした。演じてきたんだ。自分はそんなことじゃ心を動かされるはずもない冷徹な人間だと。
苦しくない――と自分自身に言い聞かせ、念じて、刷り込んで、そうして生活してきた。
それでも、半透明なカプセルから君がじっとこちらを見ていたときは、心臓が摩り下ろされるみたいに痛んだ。その後、後輩に質問された時「この心で感じることができる」という言葉を付け加えてしまうほどに。
「にゃあ」
フェリセットが鳴いた。まさか僕の考えていることを、猫である君が分かるはずもないのに。どうして君は、僕を気遣うようにそっと僕を見上げてくるんだ。
僕は、君を。
「フェリセット」
声が震える。
「にゃあ」
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