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「それでは被検体796、連れてまいります」
じっと何の感情も持たずに、カプセルに詰められたフェリセットを見送る。
カプセルを半透明にしたやつは性格が悪い。最後の最後まで見送れるようにという心遣いのつもりかもしれないが、最後まで見送れてしまうこと、それが残されたものにとってどれほど残酷な行為か分かっちゃいない。
現に、隣の後輩は必死に涙を堪えて――堪えきれずに、ぼろぼろと頬に零している。
部屋から出て行く直前、にゃお、とカプセルの中でフェリセットが鳴いた。
猫はただの猫だ、何か理由があって鳴いたわけでも何でもないだろうが、後輩にとってはそれが別れのあいさつか何かのように感じたのだろう、「フェリセット、」と泣きながら悲痛な声をあげた。
手を伸ばしてしまいそうな後輩の左肩に、そっと右手を乗せた。彼女はハッとしたように僕を見上げて、そのまま、……声を押し殺して泣いた。
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