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フェリセットは予定通り観測ロケットに詰め込まれ、何事もなく宇宙に打ち上げられ、そのまま宇宙へと旅立った。そして、13分間の飛行のすえ、高度157kmに達してその後、パラシュートにより無事に地球に戻ってきた。
文章にしてしまえばなんてことのない百文字程度の出来事。それでも、我が国、ひいてはこの世界にとっては“初めて”の出来事。
もちろん、それは僕にとっても。
僕の後輩である彼女は、フェリセットが無事に着陸したという知らせを聞いて、文字通り飛び上がるほど喜んでいた。
でも、僕はなんだか不思議な気持ちだった。
今まで僕が送り出した生き物たちは、無事に戻ってきたことなどない。ここはそう言う場所だ。無事を望んでいたら心がいくつあっても足りない。
だから、僕は冷徹であることを選んだ。
どんな顔をしてフェリセットを迎えればいいのか分からなかった。そうなっている自分にも少し驚いたけれど、結局、僕は冷徹な人間なのだから、多分、なんてことない顔をして当たり前にしていればいいのだろう。
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