フェリセットの準備は完了しました

8/14
前へ
/14ページ
次へ
 フェリセットは着地から3日後、またこの研究施設へ移されることになった。  フェリセットが戻って来る当日。俯いてばかりいる僕にしびれを切らしたように、ついに後輩は「もうちょっと嬉しそうにしてられないんですか」とイライラした口調で言った。 「フェリセットが帰ってくるんですよ。嬉しくないんですか。それとも、本当にそういう心を失くしちゃったんですか」  まっすぐな後輩の質問になんて答えたらいいのか分からなくて、僕はただ「ごめん」と謝ることしか出来なかった。後輩はまだ若いから。だからそうやって感情を露にすることも多分、成長の段階のひとつだから、いいと思う。  だけれども、僕は駄目だ。この職に就いて何年経ったと思ってるんだ。しっかりしろ。  僕の気の抜けた短い返答に後輩が小さく舌打ちを零した時、入り口から人の声がした。後輩はその声を耳にするや否や駆け出して行った。僕にはそんな真似は出来なかった。  だって、僕は――冷徹な、
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加