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ぶつりと思考を止めて、後輩が駆け出していった方へゆっくりと歩いていく。目的地は決まっている。今までフェリセットのいた部屋だ。打ち上げられてから死亡が確認されるまではそのままにしておく決まりだったから、猫の部屋は最後の日から簡単な掃除はされこそすれ、物の場所などは何も変わっていない。
「フェリセット! おかえり!」
後輩の嬉しそうな声がする。角を曲がればすぐそこがフェリセットの部屋だ――、
ぎゅっと奥歯を噛み締めたまま、開けっ放しの扉をくぐる。
「にゃあ」
「! 先輩、みて、フェリセット、元気ですよ!」
僕のことを軽蔑すると言っていたくせに、そんなことも全部忘れて腕の中にいるフェリセットを見せるべく、僕の方を振り向いた後輩。
深呼吸をして、気合を入れて後輩の方を見た。
後輩の白い腕に抱かれて、そこには、あの時のままのフェリセットがいて。
あんなに気合を入れたのに、それですら凌駕してぶわっと感情が胸に満ちる。それは、安堵と喜びとが入り混じったみたいな、何とも表現できない思い。
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