第3章

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「ただいまー。」 「…………」 「あれ?達哉居ないの?」 いつもは俺が帰ってきたらパタパタと スリッパの音を立てて、 玄関まで迎えに来てくれるのに、 今日は来ない…。 どうしても!という時は連絡さえ いれてもらえれば外出を許可するが、 今日はその連絡も来てないし こんなことは今まで一度だってないから 心がザワザワと動き出す。 急いで靴を脱ぎ捨てバタバタと 音を立てながらリビングに入ると、 ソファに丸って眠っている達哉が居た。 良かったと安堵の息を吐いて 軽く達哉を揺するとモゾモゾと動き出す。 「お。達哉起きる?」 「んっん…しゅんく…ん?」 「そうだよ。俺だよ。」 すると達哉はガバっと起き上がって パチパチと瞬きを始める。 「おっと!どうした?」 「あーぁ…やっちゃった… しゅんくんごめんね…?」 ショボーンと項垂れて謝ってくる達哉。 「ごめんね?って何が?」 「俺…寝ちゃった!」 「うん。それで?」 「しゅんが一生懸命外で働いて 来てくれてるのに… 俺お出迎えも出来ずに寝ちゃった… だから…ごめんね?」 涙の膜が目に溜まってフルフルと震える 目と口があって。 別に寝てたぐらいで俺は何も気にしてないのに 一生懸命謝ってくる達哉が 可愛すぎて愛おしい。 ポンポンと頭を撫でてあげると 我慢してた涙の一筋が達哉の頬に落ちた。 俺はそれをペロっと舌で舐めあげると ぎゅーってサトシを抱き抱える。 「俺そんなんで怒ってないぞ?」 「ホント…?怒ってない…?」 「うん。確かにいつも出迎えてくれるのに 今日は来なかったし、 なんの音もリビングから聞こえないから 達哉の身になにかあったんじゃないかって 焦ったけど、ここに居たから俺は なんも怒ってないぞ?」 「ホント…?よかった!」 「よし!じゃあ飯にするか!」 「わーい!今日は何作ってくれるの?」 「それは出来てからのお楽しみ! 達哉はテレビでも見ときな?」 「え。俺も手伝う!」 「そ?じゃあテーブル拭いて 飲み物出して?」 「分かった!」 そう言ってトコトコと歩く達哉が 本当に何事も無く無事でよかった って思えたら自然と顔が笑っていた。
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