第3章

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キッチンに立ちながら料理の腕を振るって 達哉が美味しそうな笑顔を 思い浮かべてくれるような事を考えながら、 腕を進めていく。 っていうか今思ったけど… 達哉って基本一日中家に居るのに なんで寝ていたんだろうか? 冷蔵庫を漁って「これ出そー!」 なんてワインを取り出して、 食器棚から上にあるワイングラスを ぴょんぴょんと跳ねて取ろうとしている 達哉の後ろに回り込んで、 ワイングラスをひょいっと取ってやる。 「いいなー。しゅんは。」 「ん?何が?」 「背があって俺みたいに跳ねなくても 高いところから物が取れるだろ?」 「なにそんな可愛いこと言うの? 俺は達哉の全てが好きだぞ? 背ちっちゃくてもそれが達哉だから 俺は好きだぞ?」 「ふーん//」 「ほら。そうやってすぐ照れて 顔が真っ赤になるところとかさ? すげぇ好きだぞ。」 真っ赤に照れてるくせに、 ふーんなんて強気な言葉で返してくれる 達哉にちゅってわざと音を立てて 触れるだけのキスをした。 それから後ろに回って腰を抱く。 「もう~なんだよ//」 「てか達哉に 聞きたいことがあるんだけど?」 「なんだよー。」 「達哉って基本一日中家に居るよな?」 「うん?」 「たまに家出る時あるけどさ? それはちゃんと俺に連絡くれるよな?」 「うん…」 「今日はなんも連絡なかったよな?」 「してないけど?」 「じゃあさ?何で寝てたわけ? 別に寝たらダメとかそういう訳ではないぞ? お前が気にしてたみたいに 何で玄関までお出迎えしてくれなかった? とか思ってることでもないぞ?」 「うん…」 「たださ?昼寝した時間帯って おかしくないかい?」 達哉の腰に回していた腕を離し、 クルっと俺と向かい合わせるようにして、 なんだか歯切れの悪い返答しか 返して来なかった達哉の顔を ジィーっと見つめる。 なんだか言いにくそうに口をパクパクと 開いては閉じてを繰り返して、 ぎゅーっとパーカーの裾を握る達哉が 口を開いてくれるのを 俺は黙って待っていた。 先を促すのは簡単だが、そうすると達哉は 上手く言葉を繋げられないし、 そんな事は俺もしたくないから 根気よく達哉が喋ってくれるのを 俺は待つ。
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