第5章

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「えへへ。珖の唇と照れた顔俺、 もらえたから頑張るぞー!」 なんて言いながら厨房の中へと 消えていった悠二さんを目で追いながら 本当に可愛い彼女だと思う。 しかし参りましたね。いやはや想定外。 まさかここまで達哉さん目当ての客が 出来るなんてさすがの俺でも 計算外の出来事に再び頭を抱えると、 注文を聞き終わったのかカウンターに 近付いてくる達哉さんが目に入る。 「これお願いします。」 「はいはい。ってそれどうしたの?」 紙袋を腕に下げていたのが視界に入り、 それと言いながら指を指すと 「なんかね?プレゼントとか言いながら もらっちゃった~」 と困ったような顔を向ける達哉さんに 俺の頭の中が更に困ってしまった。 どうにかしないとこの場面を見られたら 確実に駿太くんに店を壊される! あ。そうだ!目には目をだ。 「ねぇ。達哉さん?」 「ん?なに?」 「今日って駿太くん何してんの?」 「えー?仕事じゃないかな?」 「じゃあさ?昼休憩の時ここに食べに来て って誘っといてくれますか?」 「お!それいいな!ちょっと裏で メールしてくる!」 嬉しそうに厨房に消えていったのを見送り、 俺も駿太さんへのLINEを開いた。 「駿太くん。達哉さんから 誘いがあると思いますが、 それに乗らないと このままでは達哉さんはどこかの狼に 食われてしまうかもしれません。 なので思う存分こちらへ来たら イチャこいてください。」 よし。これで一件落着だな。 最早収集が付かない今の状況は ここで彼氏が登場すれば、 本気愛の何割かは 居なくなってくれるだろう。 アバンチュールとゲイは分からないが… 常に目を見開かせてこれでも警護している 俺の身も考えてもらいたいから 先手を打つほか他に方法はない。 でもある程度は駿太くんに 怒られる覚悟もしないといけないよな。 「はぁ~…」 「どったの?珖?」 「わ!びっくりした! 悠二さんどこから?」 「どこからって普通に厨房からだよ! ほら!料理出来たから持ってきたの! でもなんで溜息吐いちゃってるの? 俺のこと嫌いになったの?」 「違いますって。駿太くんに 怒られるかもって思ったから。」 「え?怒られちゃうの? そしたら俺がやっつけるよ?」 本気な顔をしてパンチだーとか言いながら 拳を突き上げてくる悠二さんを見て、 ちょっと沈んでいた気持ちが 晴れていくような感覚になった。
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