第6章

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第6章

なんだか俺を呼ぶ声が聞こえるから 起きようと目を開けるが、 一瞬で閉じてしまい ブルっと体を震わせ再び布団を被る。 「え?達哉今起きたでしょ? 起きないの?今日バイトは?」 やっぱり起こしてくるのは俺の愛しい彼氏で 手が宙を彷徨うように動かすと、 ガシっと捕まれその途端に 「冷た!」と驚きの声も上がる。 「達哉体調悪い?」 「ん~…怠い…」 「ちょっとごめんな?」 布団を捲られ、しゅんの手が 気配で近づいてくるが、 俺は目を瞑ったまま。 「あっつ!すげぇ熱あるぞ?」 「ん~…熱…?」 「ちょっと待っとけ。」 そう言ってしゅんが離れてく気配で 俺はやっと目を開けると、 ドタバタと棚を開けたりなんなりして タオルと体温計を握りしめて戻ってきた。 「とりあえず熱計ろうな? 辛いだろうけど体起こすぞ?」 「ん~…やだ~…」 「やだじゃねぇから。ほら捕まって?」 しゅんの腕に無理矢理起こされて、 ちゃんと座ることも億劫なぐらい 怠い俺の背に回って、 凭れるような形になってくれた しゅんの腕の中に納められた。 タオルで汗を拭きながら器用に体温計を 挟まれてされるがままの俺。 優しく俺の髪を梳かすように頭を撫でられ 気持ち良さに目を細めると電子音が鳴った。 「うっわ!八度五分もあるぞ? 辛かったよな?ごめんな?」 「別にしゅんが謝ることじゃない… てゆーか…仕事は…?」 「こんな状態で行けるわけないだろ。 そんな事気にしなくていいから。 達哉は寝てな?お粥食べれる?」 「もうしゅん優しすぎ… お粥いらない…」 「じゃあ達哉は寝るしかないな。 昼時には起こすからそのまま寝てな? そしたらお粥食って漢方飲もうぜ?」 「漢方…苦い…やだ…」 「やだって言われてもな… あ。そうだ。医者に知り合いいるから 処方された薬なら飲めるか?」 「うん…のむかも…寝る…」 しゅんがせっかく心配してくれて、 仕事を休んでまで俺の面倒を見てくれるって 言ってくれたのに、 体は正直で しゅんの腕に抱かれて眠ってしまった。 ふと目を覚ました時にデコに冷えピタが 貼ってあって、 スウェットも代わっていた。 でも部屋の中にしゅんの存在は無くて、 寂しくなって枕元にある携帯を手に取ったら しゅんからLINEが入っており、 病院に行ってくると書いてあり やっさしい~よな。やっぱり。 なんて思いつつ再び眠りについた。
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