第7章

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第7章

甲斐甲斐しくお世話してくれる しゅんのお陰で2日間寝込めば 見事に回復していった俺の体。 遊楽でもちゃんと働くことが出来、 手土産に悠二ちゃんに持たされた お店に出している余ったケーキの箱を 崩れないように帰り道を歩くと と聞きたくもない着信音が唐突に響く。 一つ息を吐き意を決して画面も見ずに 応答ボタンをタップする。 「はい。」 「明日朝10時仕事です。」 「それでどこに行けば?」 「いつものように大通りの本屋の前で。」 用件だけを聞ければ後はどうでもいいから 一言二言言葉を発するだけで 電話を切るボタンをタップして また一つ溜息を吐いて携帯をしまい込む。 帰ってから明日は駿太に出掛けることを 話さないといけないよな…。 喫茶店の方にも休みの連絡いれないとな…。 ちぇ、せっかく風邪も治って 普段通りの生活がやっと送れるように なったのによ、なんだよ。 道端にあった小石を今の気持ちを 吹き飛ばすようにカランと蹴った。 「ただいま~」 「お。達哉お帰り。」 俺が働き始めてしゅんのお出迎えが 毎日出来なくなった今、 今日は初めて しゅんに出迎えられて、 抱かれた腕の中で なんだか顔がにやけてくる。 「んふふ~。」 「どうした?なんかご機嫌だな。」 「しゅんの腕の中あったけー。」 「なんだそれ。そんな可愛いこと言うと 襲っちゃうぞ?」 「えー。俺腹減ったもん。 いい匂いするしー。」 「もーすぐ出来るから手洗いうがいして 待っとけよな。」 「んふふ。はーい。」 どっちが年上だか分からないぐらい しゅんに甘やかされてる俺は 手土産のケーキの箱をしゅんに持たせ、 洗面所へ向かう心の中でそっと ごめんなと呟いた。 しばらくして飯が出来上がって、 にやけながら食べる俺は ちょこちょこ零してしまうが それをしゅんは 一つ一つ丁寧に取ってくれて、 しゅんの口の中へと消えていく。 「それ毎回言うが落ちたやつだぞ?」 「うん。それが何?」 「汚いだろ?」 「汚い?どうして? 達哉の口から零れた物は余計美味いぜ?」 「もう!しゅんのバカ//」 「ほら照れてる達哉も見れて 二度美味いの。ふふ。」 「もういい!ご馳走様でした!」 「はい。お粗末さまでした。」 なんだろ?しゅんのストレートの言葉が 未だに慣れなくて照れる俺って一体。 そのまま逃げるようにバスルームに行き 疲れた体を熱いお湯で解した。
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