第7章

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俺が葛城さんに出会ったのは20代半ば。 肩がぶつかったか何かでチンピラに絡まれ、 喧嘩を買って殴り合っていたところに 地元の人から通報を受けたかなにかで その喧嘩を止めに入ったのが葛城さん。 そのまま警察にしょっ引かれ、 事情聴取を終えた後に何故だか 別室に連れて行かれた。 そこで再び出会ったのが葛城さん。 なんでも俺の洞察力に神経反射力、 腕っぷしの力の強さを評価されて この話が持ち出された。 「有本さん。人を殺した事はありますか?」 真っ直ぐな目で見られ初めて声を聞いた。 一発目にこの言葉が掛けられた。 俺が怪訝そうに顔を歪めイライラしだし、 貧乏揺すりをし始めて返事をしなくても 尚もその真っ直ぐな目で見られてて、 淡々とこの世では裁けない 警察や政治家の悪業。 裏の世界でのうのうと生きてる人間が 許せないとポツリポツリと語り出す。 次第に俺の貧乏揺すりは止まり、 葛城さんの話を真剣に聞いていて、 守りたいものを守れないくせに この世の為に警察をしている自分が 嫌になり死にたくなる事もあると言う 葛城さんの話を黙って聞いていた。 「それで?結局何が言いたいんだ?」 タバコに手をつけ取り出し火をつけたら ズイっと差し出された灰皿。 それを見る俺の前で 「有本さんにはその人達を葬ってほしい。 勿論許されることではないわ。 でも…薬や麻薬に手を出し それらを売って金儲けしている人。 幼女や少年…ううん。未成年だけではないわ。 合意の上もクソもない自分等の趣味で 乱暴に犯して自分の快楽を手に入れる人。 国民の皆さんから頂いてる税金を 自分で使い込んでる人。 そうやってる人が平気に笑って 暮らしてる事が許せないのよ。 だから…手を貸して頂けないかしら? 勿論あなたが捕まらないように こちらも全面協力は勿論。 報酬だってちゃんと払うから。 だから…この腐った世の中を 一緒に変えていってくれないかしら?」 裁かれない人々の悪事を それは辛そうな顔をして話し、 それでも本当に許せないという気持ちからか 強い眼差しで見つめる葛城さんは イライラが募っているのだろうか。 握った拳がわなわなと震えてる。 俺は吸っていたタバコの煙を 肺いっぱい吸い込んで 長い息を吐くようにはぁ~とゆっくり 吐き出していった。 タバコを揉み消すと灰皿のカタカタと いう音がやけに静かなこの部屋に響いた。
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