第8章

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達哉の要望に応え釣りに来たのはいいが、 達哉はボーっとするのが好きなのだが、 俺はあいにく体を動かすのが好き。 ボーっとじぃーっとなんて出来ない。 達哉を横目で見るとうつらうつらと 船を漕いでるが手はしっかり釣竿を 持ってるから夢心地ってとこかな? 「おーい。達哉?」 「………」 「達哉?寝てんの?起きてるだろ?」 「……………」 「おーい。反応しないとキスすんぞ?」 「もう!なんだよ!」 「やっぱり起きてたじゃないか! なんで無視するんだよ!」 「俺は黄昏てたの。」 「え?黄昏?なんで?」 「海だから。」 「ん?どういうことだ?まぁいっか。 とりあえずしりとりしよーぜ?」 「は?しりとり?」 「暇だから。達哉からでいいぜ?」 「じゃあ釣り?」 「り…理屈よりも本能!」 「は?」 「はじゃなくてうだぞ!」 「海」 「耳が弱い達哉!」 「はぁ!?」 「はぁ!?じゃなくてや!」 「知るかよ!」 「夜はアンアン素直な達哉!」 「もう知らねー」 「寝顔が世界一可愛い達哉!」 「もうしゅんうるせー///うるせー!」 耳が真っ赤で照れてやんの! そんな可愛い達哉を見て俺の心が ほっこりとあったまる感覚になる。 そんな俺らの会話を聞いていたのか、 船長から豪快な笑い声が聞こえるが、 変に嫌な感じはなくてその笑い声もまた 俺の心を温めてくれる。 3時間釣りをして船長にお礼を言って 船を後にし、一旦家へと戻ってきた。 達哉はクーラーボックスを 嬉しそうに抱えてキッチンへ消えていく。 「ってえ?達哉魚捌くの?」 「しゅんのお陰で大量だぞ~ 新鮮な魚食わしてやる!」 「嬉しいけどさ?海でベタベタするし 体冷えてるから風呂溜まったら入ろうぜ?」 「しゅん先入っていいぞ。」 「だめー。一緒に入るから。」 「は?なんで?」 「時間的な事を考えると効率いいぞ。」 「なんで?まだ6時だぞ? 別々に入っても間に合うだろ?」 魚を捌く手は止めずに会話に答えてるが なんだか無性に魚に嫉妬する! リビングのソファに座って話し掛けてるのに 一切こっちを見てくんねーの。 ずーっと見てんのに見てくんねーの。 あ。皿を出し始めたから捌き終わったのか? お。タイミング良く風呂が溜まった合図が 俺の耳に届いてくる。 俺は魚に集中している達哉の背後に コッソリと近づき後ろから達哉を ギュっと抱き締めてやった。
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