別に今のままでいい

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 高校の中庭にあるベンチに腰をかけて、持参した弁当を口に運ぶ。前日のスーパーで買った惣菜の詰め合わせだけど。  「お弁当ついてるよ」  横に腰かけた女生徒が、私の口元についた米粒を口に入れる。  「ありがと。でも、別に食べなくても」  「だってもったいないじゃん」  「だとしても自分で食べる」  カップルか、と心の中でツッコミながら、また弁当を食べ始める。  そんな私を、彼女はキラキラとした表情で見つめていた。  「どうしたの」  その時、グゥー、という音が聞こえてくる。  「ごはんは?」  「忘れちゃって」  今日は寝坊したらしく、朝食を食べてこなかったという。  「お金は?」  「忘れちゃった」  人懐っこい笑顔で、ペロッと舌を出した彼女を見て私は大袈裟にため息をついた。
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