釣りマスター牧野

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釣りマスター牧野

 牧野先生の一番の楽しみは、渓流釣りだ。50才を少し過ぎた中年ながら、アマゴを目指して、渓流に(さわ)に分け入って行く。その釣行談(ちょうこうだん)を聞くたびに、私の胸はときめいた。いつしか私も、アウトドア派になっていたのだ。  ある日の放課後、遊びの弟子になってから3年目の4月、私は思い切って牧野先生に懇願した。 「今度釣りに行かれる時は、一緒に連れて言って下さい!」 「おっと、赤葉さんもやりたくなったか」 「あの、できれば釣りも教えてください」 「ええよ。じゃあ、明日は土曜日やからね。行こうか」 「どこへ、行くんですか?」 「そうやな。穴吹川(あなぶきがわ)に行こうか」  牧野先生は、ロードマップを開くと、私に見せた。牧野先生はバイク用のロードマップを常備している。 「穴吹川って、徳島県ですね。ここからだと車でどのくらいですか?」 「1時間半くらいかな。まあ、2時間もあれば行けるけん」  私たちの住んでいる香川県には、アマゴが生息する川が身近にない。渓流釣りを楽しむためには、他県の川に行かなければならないのだ。 「わかりました! 明日、朝7時に先生宅に、お迎えにあがります」 「うん。わかった。じゃあ明日な」
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