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 微かに動く唇。  それに呼応するかのように、ほんの少しずつ体が動き出す。  あれからどれだけ経ったのか、もうそれすら思い出せない。  風が顔をかすめた。  たった今まで感じることが出来なかった世界。  ああ、こんな物ですら今は愛おしく感じる。  全身に力をこめると、体を覆う石たちが崩れ落ちた。 「長かった……」  時間の感覚はなくとも、それだけは分かる。    私は自分の後ろにある朽ち果てた玉座を見た。  勢を極め、仲間で溢れた風景はもうなかった。  ただ埃と砂にまみれ、至る所が崩れ落ちた廃墟でしかない。  あの日、私たちは全てを滅ぼされた。  仲間、愛した人、街の者たちすらも。  何をしたというのだろう。  私たちはただ自国の法の元、生きてきただけ。  それなのにあの男は―― 「完全に私を滅ぼせなかったこと、絶対に後悔させてやるわ」  そう。  例えあの男がもう生きていなかったとしても、邪魔する人間など全て滅ぼしてしまえばいい。  私たちは今までそうやって生きてきたのだから。  薄汚れた鏡に微笑むと、私は翼を広げ大きく飛び立った。  再び始じまる殺戮の宴に、ただ心を躍らせて。
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