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「お遊びって、そんな……なんでそんなこと……」
とても信じられないというように、杏子は頭を抱え ふるふると左右に振った。
「花澄と真里絵、二人とも。劇中だけでなく、現実にも康治を好きになってしまったんだろう。痴情のもつれ――ってところかな」
統一郎は、相変わらず淡々とした調子で続ける。
「康治、君は花澄から愛の告白を受けていたんじゃないのか」
「そ、それは……」
指摘に、康治は おろおろと視線を彷徨わせる。
「二人が康治さんを好きだったのは、たしかにそうかもしれないけど……だからって……」
「まあ、いい。とにかく、これで事件は解決したんだ。嫌なことは早く忘れて――」
顔を覆って泣き出してしまった杏子に、冷酷とも思える統一郎の言葉が浴びせられる。
仲間が二人も命を落としたというのに どうしてこうも冷静でいられるのか。文句の一つでも言ってやろうと、雄太が腰を浮かせた時だった。
「そんなっ! 忘れたくても……そんなの一生忘れられませんよっ!!」
康治の悲痛な叫びが響き渡った。
「何も知らなかったとはいえ、花澄さんを実際に刺してしまったのは……この僕なんだ……!」
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