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ところがである。
鑑識に回された遺書からは、不自然なことに誰の指紋も出てこなかったという。
その上パソコンで打たれた文字なので、元々筆跡も鑑定することが出来なかった。
*
「真里絵が口にしたジュースは、冷凍庫にあったものだったよな」
発見時の状況を確認しようと、雄太が杏子へ目を向ける。
「ええ、そうだったわね。それが何か……」
「これから服毒自殺しようって時に、わざわざ凍らせるかなって思ってさ」
「真里絵さんは、普段から冷凍庫に入れていたじゃないの。より冷たいのが美味しいからって」
「それにしたって、毒をジュースに入れる必要なんて、ないんじゃないか」
雄太の疑問に「そうかしら」と首を傾げる杏子。
康治がおずおずと口を挟んだ。
「少し溶けてシェイク状になったのが好きなんだって言ってましたね。苦いお薬を飲んだ後なんかにもお口直しにって言って飲んでいたのを見た事があります」
まるで、それのどこに不可解な点があるのかと言わんばかりの二人。
――全く、どいつもこいつも……!
苛立ちを隠せない雄太は つい口調が強くなる。
「だからさっ、真里絵のその癖を利用した誰かが、予め毒を仕込んでいたんじゃないか――ってことだよっ!」
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