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急遽、花澄が演じていた箇所には杏子が代役として配置され、照明と音響の操作は統一郎が行うことになった。
「まったく、こんな時に よく続ける気になれるよな!」
誰にともなく吐き捨てるように呟いた雄太に、真里絵が すかさず反論する。
「明日からの上演を中止したからって、花澄が戻ってくるわけでも何でもないでしょ。この劇場を借りるのにいくらかかったと思ってるの」
「なんだと?!」
雄太が叫ぶ。今にも掴みかからんばかりの勢いだ。
そんな二人の間に、今度は統一郎が割って入る。
「真里絵の言うとおりだ。花澄の無念を晴らすためにも、この舞台を成功させるべきだと思うな」
穏やかな中に冷たさを含んだ口調であるが、それが的確な意見であることも否めなかった。
統一郎へ同意するかのように杏子が頷く。
康治は唇を噛んで俯いたままだ。
雄太はそれ以上何も言えず、代わりに深い溜め息を吐いた。
とにかく今日は早めに休もうということになり、五人は思い思いの休憩場所へと散って行った。
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