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ぼくはこのどこの誰かも分からない人間が言う通り、大きな苦しみと孤独を抱え、精神的に本当に参っていて人生最大のどん底期に入っていた。だが、それでもこれが怪しい新宗教団体からの勧誘であるという冷静な判断はできていた。
けれどこのときのぼくは思い出し、考えていたのである。まだ夢衣子が白服の人間であったなら、このメッセージに対してどういう対応を取っただろうか? ということを。
夢衣子はきっとぼくの反対を押し切ってでも、こちらから反応を返して赤達磨教総本山とやらに乗り込んで行ったに違いない――ぼくらの本当の幸せのために。だからぼくは白服時代の夢衣子の意思を継ぐように、アクセスしたのである。
とは言え、あまりにも怪しいのでコンタクトを取る前に赤達磨教について調べた。だが、インターネット上にはこの赤達磨教の公式ホームページと、短いウィキペディアの文章しかなかった。
ウィキペディアには代表赤間福二が運営する新宗教団体とだけ称されていた。あと分かったことは、総本山は四国にあるということだけ。
ネット検索だけでは具体的に赤間が何を唱え、どんな教えを広めようとしてきたのかいまいち分からなかったが、赤間がこの「マーセスの邪悪な力」だとか「黒装束からの苦しみ」だとかの敵の出現と、自分たち赤達磨教への悪影響を語るようになったのは二年ほど前とごく最近のことだった。つまり恐らく赤間は白服の人間なのだろう。
そしてそういった発言をするようになってからより信者が増え始めたようで、既に都内と東北にごく小さなものだが支部もあるらしい。
もともとオカルト好きであったり宗教に興味があった人間なら、この自身に降りかかった異様な現象を神としての開眼のように思っても仕方ないようにも思えた。
……と、いろいろ想像することはできたがあくまで想像止まりで、この赤達磨教とやらが結局どこまでこの超常現象に関わる集団であるのか、それ以上何か手掛かりになるようなものは探せなかった。
ぼくは再び赤達磨教からのDMに戻り、意を決してメッセージを飛ばした。もう飛び込むしかないだろう。
白服の夢衣子を取り戻したい、もう一度会いたい――。
その一心で、赤達磨教への入信の願いを伝えた。
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