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「──あなたはどうしてロミオなの?」
ジュリエットの白い頬を、透明な雫が伝い落ちた。
濡れた宝石のようで美しい。
彼女に見惚れながらも、ロミオの胸はずきりと痛み、彼もまた涙をこぼしていた。
「あなたが……あなたが憎い。どうして結ばれない運命なのに、私と出逢ってしまったの。あなたと別れるくらいなら、私はあなたの腕の中で死んでしまいたい……」
泣き崩れてしまったジュリエットのやわらかな身体を、ロミオは抱き締める。ジュリエットの手に握られた短剣が、暗闇のなか淡い輝きを放っている。
でも、ロミオはまだ諦めたくなかった。この世界のどこかに、彼女とふたり幸せに過ごせる花園があると信じていたかった。
「ジュリエット。僕はやっぱり、君とともに生きていたいんだ」
「……あなたがそう望むなら。いつまでもあなたの傍にいるわ」
ふたりの瞳に光がやどる。
寄り添うふたつの影は美しかった。
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