大人になること

　それでも日常は存在する。と、いうより、日常は何も変わらなかった。
仕事はきちんとこなしていたし、食生活も、休日の過ごし方も、変わったつもりはないのに、投げやりな気持ちで生活していた、というだけで、半年で５キロも体重が増えた。

　もともと頭痛持ちではあったけれど、肩こりと腰痛も加わって、鎮痛剤が手放せない日々。鎮痛剤の消費量が我ながら恐ろしくなって、マッサージに通いはじめた。

　この凝り固まった身体をもみほぐしてほしい、初めのうち、それがそれ程難しいこととは思わなかった。
リラクゼーション、足つぼ、アロマ、タイ古式マッサージと手当たり次第に通ってみたけれど、どこに行っても、一瞬、楽になったような気がすることはあっても、肩や背中に重しが乗っているような、重苦しい感覚がなくなることはなくて、辛かった。

　駅前のコーヒーショップの２階の窓側の席で、次の休日に予約できるリラックスサロンを検索していていて、スマホからふと目を上げた時に飛び込んできた、「整体」の看板の二文字が突然、妙に説得力がある気がした。
あそこなら、わたしのこのゆがんだ身体を整えてくれるかもしれない。
検索サイトには載っていないその店の電話番号を検索して、その場で予約を入れた。

そこにいたのが、熊くんだ。