恋する熊さんは「王子様」になりたい

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 ゲームの攻略対象である王子様は五人。恩田さんの推しは五人全員。わかる、確かに全員すっごくカッコいい。    とはいえ、恩田さんが見える王子様はその時の最推しの一人。五人の内、誰の顔に見えるかはわからない。つまり五人全員を演じられないといけないということ。 「よし、熊太郎、特訓だ。昨日徹夜で全員のキャラを把握してきたから任せろ」 「お、押忍!」 「押忍なんて言わない!」  早速、ダメ出し。熊太郎はちょっと怯えている。 「目指すはイケメン王子様。そのキャラは次の通り」 ①俺様野獣系、でも本当は繊細王子様『レグルス』 ②厳格冷徹、たまに見せる笑顔が素敵な本当は温か王子様『シリウス』 ③人懐こい弟系、でも時々小悪魔王子様『リゲル』 ④動植物を愛する温厚草食系、でも怒ると激情王子様『プロキオン』 ⑤誰彼構わず口説くナンパ男、でも恋すると一途な王子様『アクルクス』 「改めて見ると、難易度高いなぁ」 「弱音吐かない。まずはこの台詞を言ってみて」  各キャラのゲーム中の代表的な台詞を書き出したものを渡した。熊太郎は眉間にしわを寄せている。 「……本当に読むのか?」 「イエス」  先を促すと、熊太郎は咳払いして、深呼吸して、さらに気合いを入れてから声を発した。 「お……『お前の居場所は俺の隣だ。それ以外認めねぇ』」 「棒読み。次」 「『厳粛に、手に入れると決めたら必ず手に入れる。お前のこともな』」 「照れすぎ。次」 「『どこ行ってたの? 寂しかったよ』」 「意味わかんないって顔しない。次」 「『綺麗な花を見に行きませんか? あなたが行くと、花たちも喜びます』」 「噛みそうにならない。次」 「『ねぇ、君……俺と遊ばない? 来てくれないなら、無理矢理にでも』……さ、攫っちゃ……!」 「せめて最後まで言おうよ……まぁ気持ちは分かるけど」 「無理。ハードル高いどころか、不可能……!」 「あんたがなりたいって言ったんでしょ。今から一個ずつダメ出ししていくから、練習練習!」 「ううぅ……『王子様』って顔が良いだけじゃなかったのか……!」 「何事も楽な道などないのだよ」  まぁこの熊太郎は自ら茨の道を進みたがる傾向はあるけど、黙っておこう。今はひたすら、道を切り拓くのみ……!
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