ジャック・オ・ランタンのなる木

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 王都から遙か遠く、暗い森を抜け海岸沿いを進んだところに古びた城があった。  美しい女領主がその城の主で、その庭には世にも奇妙なジャック・オ・ランタンのなる木があるという。誰かが吊しているんだろ、と言う者もいたが、調べてみるとしっかりと果実と同じようになっているのだそうだ。  私はそのジャック・オ・ランタンのなる木目当てで、女領主に会いに来た。一年に一度開かれるという仮面舞踏会の情報を手に入れたのだ。その開催日が今日だ。招待状は伝手を使って入手した。この日のために、久々に仮面舞踏会用の服を引っ張り出して、周りから驚かれたのはまた別の話。 ※※※  遠路はるばるやってきた城への入城は、招待状を見せればすぐに許可された。始まるまでは好きに過ごして良いと言われたので、目当ての木を探すために庭に出る。  さてさて、お目当ての木はどこかな。  ジャック・オ・ランタンの元の姿はカボチャである。それに魂が宿ったものがジャック・オ・ランタンと言われているが、カボチャに施した装飾に過ぎないと私は思っていた。木になるカボチャに魂が宿ってるかどうかはどうでもいい。本来は土の上になるものが木になり、装飾までされているという不思議な現象を解き明かしたい。私は不思議なものに目がないのだ。  どんな魔術なのか、それとも呪いなのか。  ああ、でもそうなると、やはり本当に魂が宿っているのかも気になるな。
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