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――おれは何かの使いだとか、死神だとか、そういったものでは決してないよ。
はじめて夢に現れたとき、彼は手を差し出しながらそう言った。おれはその手を握る気になれるわけがなかった。
じゃあいったいお前は何なんだと問えば、ただの人だと言う。おれがその時はじめて見た彼の顔も、例のペテン師じみたニヤケ顔を浮かべたあの表情だった。
「強いて言うなら、カウンセラーみたいなものかな? とりあえず、きみと話をするためだけに来た」
その仮面の奥でも、彼は笑っていたのだろうか。彼なりに初対面だから愛想を良くすることが目的だったようだが、その仮面はまさに当時のおれに対して間違いなく逆効果だった。
「おれはできるならきみの一番の理解者でありたいと思っている。それはおれのためでもあるし、きみのためでもある。決してきみに危害を加えたり、損をさせたりする人間ではないから、それだけは信じてほしいな」
彼はよくこうしたつかみどころのない発言をする。その発言の意味を捉えようとするのも面倒で、あまり考えないようになった。
しかし、それからこうして何度か顔を合わせる度に思うのは――彼は仮面で、おれは顔が見えないから、顔を合わせるという表現は不適切なのかもしれないが――彼は確かにおれの理解者であり、本当にただ話を聞いて時に助言をくれる、まさにカウンセラーのようなものだった。
いつもおれの心の内を見透かしたかのような言動には、何か超人じみたものを感じないわけにはいかない。
何せ、こうしてよく分からない夢の世界に現れるくらいだ。これのどこがただの人だと言うのだ。
しかし、おれがこんな話をできるのは、そんな得たいの知れない仮面の男だけだということは、紛れもない事実だった。
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