絶望と裏切り

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 その場にいた光冴とオーナーが、何事かと彼の方を見る。すると理叶はおもむろにわたしの顔を指差し── 「それ、誰にやられた」  険しい表情をしてカウンター席から立ち上がった。 「え……」 「頬に指の跡がくっきり残ってる。誰にやられた」  しまった。おばさんに引っ叩かれた後に処置をしていなかったんだ。とっさに長い髪で顔を隠すように下を向いたけど、もう遅い。 「言え、誰がお前を傷つけたんだ」  理叶はほんの些細な頬の傷に気づくほど他人の変化に敏感で、観察眼が優れている。一方で賢い頭脳を持ちながら、高身長に引き締まった肢体と、高校生とは思えない体格に恵まれている。そんな彼からにじみ出る雰囲気は威圧的で冷たく、容易に逆らえない。  さすが、東日本で指折りの暴走族の頭というだけある。
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