Birthday Surprise!

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 先生が板書する時は「どこも大事!」みたいに書くからごちゃごちゃしてわかりにくいけれど、要点は至ってシンプルだ。本当に注意すべきポイントがわかっていれば、間違いだって起こらない。尚斗は板書をそっくりそのまま写しているけど、そういうポイントの抑えが弱いのだ。そこを俺が補えば良い。  尚斗はテストの点が上がるし、俺は好きな人と一緒に勉強ができるしで一石二鳥だ。  ミーティングの終わりを待ちながらテスト対策を頭の中で練っていると、訓覇主将が話を終えて解散の合図が出された。  昭彦たちと部室に向かうために体育館を出ると外はすっかり暗くなっていた。肌を撫でる風も、どことなく肌寒い。もうすっかり秋の空気だ。  部室につくと各々割り当てられたロッカーの前で制服に着替える。  練習用のTシャツを脱いで、ボディシートで簡単に汗をかいた首元や脇の下を拭き取り、登校時に着ていたシャツに袖を通していると、昭彦が、 「尚斗、今日は図書当番ないんだっけ?」  と話しかけてきた。 「うん。今日はお夕飯の買い物があるから、図書室で一時間くらい自主学習したら帰るって言ってたし、もう帰ってると思うよ」  尚斗が図書当番の日は、こっちの部活が終わる時間くらいまで図書カウンターにつめているので、連絡を取り合って一緒に帰る日がままある。  けれどそうじゃない日は、尚斗は図書室や自習室で自主的に勉強してから帰ることにしているみたい。自主的に勉強とは言いつつも、実際やっているのは学校で出された課題で、一度だけ「帰ってからやればいいのに」と言ったら「帰ったら本を読んで出来ないから」と返ってきたことがある。理由が理由で思わず笑ってしまったのは記憶に新しい。 (ホント、尚斗は本の虫だよなぁ……)  家でも学校でも隙さえあれば本を読み耽る尚斗が、自分と付き合うようになってからその時間を減らしているのは一目瞭然で、それが彼にとって良いことなのか悪いことなのか、考えたこともあったけれど、いつだったか「本はいつでも読めるから」と、本来なら興味薄なはずのバスケの話に耳を傾けてくれた時は心底嬉しくなった。  俺が尚斗のことを知りたいと伝えたあの日から──尚斗も尚斗なりに、俺のことを知ろうとしてくれてるんだって、そう思えて。 「夕飯って、アイツ作れるの?」 「お味噌汁は作れるって言ってたけど、他はどうかなぁ……?」  先に着替え終えた昭彦が通学用のリュックを取り出してロッカーの扉を閉めるのと同時に疑問を口にしたから、ちょっと視線を泳がせて曖昧な返事をすると、 「じーちゃんが帰ってくんなら平気じゃね? 普段だってじーちゃんが飯作ってるって言ってたじゃん」  着替え終えた亮平が横から口を挟んでくる。  あとはもう帰るだけだからか、ワイシャツの前は全開で中のTシャツが丸見えだ。当然、ネクタイもしていない。適当に詰め込んだらしく、通学に使っているリュックの横から中途半端にネクタイの端っこが飛び出してる。
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