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それがなんとも先輩らしくて、クスリと笑い声を漏らすと──。
「つか、その〝秋月先輩〟てのやめろ」
秋月先輩がそう言いながら、ジトリとした視線を俺の方へ向けた。
「えっ、でも先輩だし……」
「苗字で呼ぶな。名前でいい」
「じゃあ、朔夜先輩? って呼べばいいんですか?」
「ああ」
「わかりました」
コクリと頷くと、朔夜先輩は「それでいい」とばかりに眉間のシワを伸ばして頷く。すぐさま昭彦たちの方に視線を向けると、
「お前らもだ」
と付け加えた。
亮平が肩を竦め、昭彦が目を見張る。
「あっ! オレもオレもー! 下の名前で呼んで~。〝志賀先輩〟だとなんか距離があるじゃない? もっと仲良くしよーよ!」
キメキメなファンサのお手本みたいなウインクを飛ばしてくる志賀先輩──もとい、龍之介先輩を見るや、俺たちの頭に見えない小さな星がコツンって当たった。
こんなに積極的に名前で呼ばれたがる先輩も珍しいよね……。
「じゃあ、龍先輩」
「はいは~い!」
龍之介って呼ぶと長いから勝手に略しちゃったけど、先輩はニコニコしたまま元気よく手を挙げた。
(これはこのまま定着させていいんだよね……?)
笑顔を振り撒いてるし嫌がられてもなさそうだから、これでいいか──呼び方問題が解決したとみなしたのか、倭斗先生が全員分のコーヒーを淹れたカップを乗せたトレイを手に近寄ってきた。
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